漆器って何?(前編)
漆器。聞いたことはあっても実際にどういうものか、正確に説明できますか?と言われると、そこまで自信はない・・。という方も多いのではないでしょうか。
お食い初めのお膳を始め、『高級な和食器』の代名詞とも言える漆器。
なんか扱いが難しいイメージあるけど、実際はどうなの?
漆器の中にもお手頃なものと、すごく高いものがあるけど違いは何?
などなど、今回は漆器にまつわる豆知識をご紹介していきます。
漆ってそもそも何?
漆(うるし)は、ウルシの木から採取した樹液であり、塗料や接着剤として使われます。木から採れるんですね。
アジア地域では古くから用いられ、日本でも縄文時代には既に使われていたようです。漆塗りはそれ自体も艶があって美しいのですが、日本の場合はさらに金粉などを使った蒔絵(まきえ)など高度な細工を施すこともあり、古い英語では漆のことを『Japan』と呼ぶなど、名実ともに日本を代表する工芸品として知られています。
ちなみに、生の漆を触ると人によっては『かぶれて(アレルギー反応を起こして)』、かゆくなることがありますが、漆器として十分に乾燥されていれば大丈夫と言われています。
さらにちなみにマンゴーも漆科の植物なので、『マンゴー食べるとかゆくなるんだよね』という方は漆にも注意したほうが良いかもしれません。
漆器(しっき)ってそもそも何?
漆器は文字通り『漆』塗りの『器』です。女性用の櫛などの装飾品の場合や、タンスなどの家具であってもやはり漆器と呼ばれます。
美しく艷やかで、シンプルながらも和のテイストが漂うため海外の方にもとても人気です。
ちなみに冒頭の写真のように金箔などで細工を施したものは『蒔絵(まきえ)』と呼ばれます。漆を接着剤代わりにして金粉などをくっつけています。
漆器って、扱いが難しいイメージがあるけど、どうなの?
そんなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
率直に申し上げますと、『要点を抑えておけば難しくはないけど、やっぱりちょっと面倒かな』といったところです。
漆器を扱う上ではNGがいくつかあります。
・食洗機NG
・冷蔵庫NG
・電子レンジ、オーブンNG
・タワシや硬いスポンジなどNG
・沸騰したてのお湯など非常に高温の液体NG(急激な温度変化が原因なので、一度ぬるま湯を入れるなどすればOK)
いずれも傷やヒビが入るなどする危険性があります。
逆に上記のポイントさえ避ければ
・普通の食器用洗剤で洗う(柔らかいスポンジ推奨)
・温かいものを盛る
といった使い方は全く問題ありません。
必要以上に恐れ入る必要はないのですが、日常でガシガシ使うプラスチックや陶磁器に比べると少し注意が必要なことも確かですね。
漆器が高価なワケ
漆器といえば、お椀ひとつで数万円することも珍しくありませんし、お重などになると何十万というものもあります。なぜ、そんなに高いんでしょう?
一番大きな理由はかかる手間がハンパではないこと。
冒頭でご説明した、ウルシの木から樹液を採取することから始まって、最終的に製品としての漆器が完成するまで、30~40の工程が存在すると言われています。
そして、樹液を採取する職人、樹液を精製して塗料にする職人、原型となるお椀をつくる職人、実際に塗る職人などなど、各工程を専門の職人さんが担当していきます。
さらに、漆は乾燥に時間がかかり、お椀に塗ってから乾くまで1~2ヶ月が必要です。
ペンキなどの合成塗料であれば早いものは数時間で乾くことを考えると、すごい違いですね。
漆器の美しさには、たくさんの職人さんの手間と長い時間が隠されているのです。
まとめ
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
少しでも漆器について知識を深めて頂ければ嬉しいです。
そしてこの漆器、実はこれから先、さらに私達の生活から程遠いものとなってしまう可能性があります。
それは、原料となるウルシ樹液の生産量が年々減ってしまっているからです。
生産量が少なくなれば当然希少価値も上昇し、価格も上がってしまいます。
実は当店の仕入先でも今月から10%ほど、お膳の価格が上昇してしまいました・・。
(当分の間、当店のレンタル価格はそのままでやっていきます!)
店主としては、せっかくのお食い初めという機会だからこそ、赤ちゃんのためにはもちろん周りのご家族にも本物の漆器に触れていただきたいと思っています。
さて、次回は「あれ?漆器は数万円するって言ってるけど、数千円で売ってるやつもあるよ?」という疑問にお答えし、何が違うのかをご説明していきたいと想います。
お楽しみに!