【食器乱読】 ancient pottery 丸皿 ブラス S
店主が集めた食器を無秩序に紹介していく食器乱読シリーズ。
第2回目は前回の色違い、 ancient pottery のBrass(ブラス)です。
個性~どこからどう見ても使い込まれた鉄製の皿~
ancient pottery(エイシェントポタリー)はアンティークや作家物のようなディテールを持ちながらも、日常使い向けの実用性を兼ね備えたシリーズです。
焼き物(磁器と陶器の中間的性質)ですが強度が高く、電子レンジ使用可能、食洗機も使用可能、なんとオーブンにも使える(240℃まで)というかなり使い勝手が良い造りになっています。
White(ホワイト)、Gray(グレー)、Brass(ブラス)の3色が展開されており、それぞれ普通のお皿とは一味も二味も違う、『クセ』を持っているのが魅力。
前回のグレーは文字通り灰色ベースでしたが、今回のブラスはどういう意味かご存知ですか?
ブラスは黄銅(または真鍮)のこと。
身近なもので言うと5円玉の原料です。他にはトランペットなどの金管楽器にも使われています。"ブラス"バンドの語源ですね。
見た感じは5円玉よりもずっと黒っぽいですが、金属的という意味ではまさに!といったところ。
Ancient Potteryのコンセプト
前回と同様ですが、Ancient Potteryのコンセプトを公式サイトより引用します。
『憧れを抱く人も多いアンティークや作家物の器。
高価だし、使いこなせるだろうかと悩んで悩んで. . .
その一歩がなかなか踏み出せず
結局、憧れは憧れのまま . . .
Ancient Potteryはアンティークや作家物のようなディテールを持ちながらも、ストーンウェアという強い土を使った現代のライフスタイルに合った実用性の高い器です。
美濃の陶工たちと共に、美濃の素材と技術を使い、手の届く豊かさを実現させたいという思いで作りました。
あなたの憧れを実現する第一歩になってくれる器です。』
印象
まずは焼き物とは思えないその外観。
グレーもかなり金属的な見た目ですが、ブラスはさらに金属。
この写真を見て、ひと目で『陶器でしょ』と見破れる人は多くないのではないでしょうか。
落ち着いた黒もさることながら、秀逸なのはフチ。
フチの釉薬が薄くなっている部分が鈍い金色に輝き、とてもリアリティを与えています。
加えて表面にも薄いまだら状のかすれがあり、これがまた長年使い込んだ風合いを演出していると思われます。
グレーが朽ち果てた洋館で使い込まれた風格だとしたら、ブラスは老舗の鉄工所で荒々しく使い込まれながらエイジングされた、そんなストーリーを想像させてくれます。
どう使う?
グレーは単色だったり白を使ったものにしたり、置く料理を選ぶ上級者向けな面がありました。
一方、こちらのブラスはかなり合わせやすいです。
例えば、こんな感じでマドレーヌなど素朴なお菓子をポンと置くだけでも結構決まります。
濃い黒色なので料理の色を際立たせてくれますし、アンティーク調の風合いが雰囲気を盛り上げてくれます。
ほうれん草のおひたしなんかも良いですね。単純な料理なのに、なんだかすごくオーラのある感じになります(笑)。
ちなみに、このブラスの釉薬は酸や油に反応し、使い込むうちに微妙に表情が変化していきます。この特徴はグレーやホワイトにはなく、ブラス特有のもの。
そんなエイジングを楽しめるところも魅力です。
料理以外のものを置くなら、やはりアクセサリーでしょうか。
ベタにゴールドのネックレスや指輪なんかを置くとバッチリだと思いますよ。
ルーツ
公式サイトで説明されている通り、美濃をルーツとしているようです。
美濃は現在の岐阜県のあたりで、日本最大の陶磁器生産拠点と言われています。
ここで作られる焼き物は大まかに言えば美濃焼、細かく分類すると志野(しの)や織部(おりべ)などとなります。
織部などはかなり特殊ですが、基本的には普段使いの器として丈夫で使いやすく、暮らしに溶け込みやすいデザインが多いです。
お隣が『せともの』の語源となっている瀬戸市ですからね、古くから日本の食生活を支えているエリアといっても過言ではないでしょう。
ただ、あまりに歴史がありすぎるためか、近年は材料となる粘土の枯渇も心配されているそう。たしかに、陶器の原料は地元の土であり、有限ですから。大事に使いたいものです。