【うつわ豆知識】磁器とは?
知ってるようで知らないシリーズ、前回の陶器に続いて、今回は磁器についてです。
陶器と磁器を抑えておけば、焼き物はだいたい大丈夫!
この記事のマニアック度:★☆☆ (初心者の方、どうぞ!)
そもそも磁器とは?
陶石という岩石を砕いて粉状にし、それをこねて成形し、焼いたものが磁器です。
材料が石であることからいしものと呼ばれることもあります。
ちなみに陶器は材料が土なのでつちものと呼ばれることがあります。
陶器と比べた作り方の違いは、材料が石か土か、これだけと言ってしまってもいいでしょう。
細かく言うと焼成の温度とかも違うんですが、まあそれはおいておいて。
釉薬はかけたり、かけなかったりします。
陶器は水を吸ってしまう性質(吸水性)があるため、それを防ぐため釉薬をかけるのが一般的なのですが、磁器はもともと吸水性がないため、釉薬がなくても機能的にはほぼ問題がありません。
それでもタイルなど水まわりでの使用が前提となる場合は汚れなどをつきにくくしたり、素焼きとは異なった質感を与える効果があるので施釉されることもあります。
磁器の特徴
磁器の特徴といえば
・薄い
・軽い
の2点。『厚い』『重い』が特徴の陶器とは正反対の存在です。
あとは表面がツルツルしていたり、白くて光沢を帯びているものも磁器の可能性大です。
身近に磁器製品は数多くあります。
家にあるお茶碗やお皿はだいたい磁器です。
『薄い』『軽い』に加えて『吸水性がない(色移りしない)』『量産しやすい(安くできる)』という特徴もあるので、とくにこだわりなく食器を買うと、9割がた磁器になると思います。
他にも、便器。あれも磁器です。
となると洗面台もそうですし、銭湯など大きいお風呂に貼られているタイルも磁器。
目に見えないところで言うと、半導体などの素子にも使われています。
気づいていないけど、実は我々の生活は磁器無しには成り立たないんですねー。
磁器の歴史(日本)
日本における磁器の歴史、実は結構スリリングです(笑)。
始まりは1610年代の有田(佐賀県)。
磁器自体、それより以前にも中国や朝鮮半島では作られていたものの、日本国内では作れる人がいませんでした。
材料となる陶石が見つからず、ノウハウを持っている人もいなかったからです。
しかし、有田の陶工がついに陶石のとれる鉱山を発見、国産磁器の生産に成功します。
国内で作ることができず輸入ものだけだった磁器。それだけに貴重品です。
当時、有田周辺を治めていた鍋島藩はこれを門外不出の特産にするべく強力に保護。というか独占。
有田周辺には役所を設けて、意図しない流出を避けるためにできた磁器は全て藩が強制的に買取。
さらに技術が外部に漏れることを防ぐために有田一帯を包囲。
職人は一生包囲の外に出すことは無く、よそ者も入れることは無く、外部との接触をほとんど断ってしまいます。
(ひどい)
まあ、そのぶん職人の生活は保障されていたわけで、当時の庶民といえば天災や飢饉が起きれば餓死することも珍しくはなかったので、その心配がないというのは良かったのかもしれません。
加えて、今の都道府県と違って当時の『藩』というものはほとんど外国のようなものであり、特別な許可がなければよその藩に行くことはできませんでした。
生まれ育った村から一歩も出ることなく生涯を終えるということも全然珍しくなかったようなので、当時の価値観でいえば上記の包囲状態もそんなに悪いことではないのかもしれませんね。
そうやって頑張って磁器の秘伝を守ってきたのですが、ついに1806年、瀬戸(愛知県)の陶工が潜入に成功!
ノウハウを盗んで瀬戸への帰還を果たします。いやー、200年近くよく守ったものだ。
以降、瀬戸でも磁器の生産が開始されるとともに瀬戸では特にノウハウを秘匿しなかったため、製法は全国に伝播し、各地で磁器が作られ普及するようになりました。
自然発生的に気がついたら日本各地で作られるようになった陶器とは大きな違いですね。
ちなみに上の写真は有田の元祖磁器陶工「金ヶ江三兵衛」が祀られている陶山(すえやま)神社で、鳥居が磁器でできています。
磁器の歴史(世界)
日本では400年前と、わりと最近作られるようになった磁器ですが、世界でははるか昔から作られていました。
元祖は中国。西暦200年ごろの漢の時代には本格的な磁器の製法が確立していたようです。三国志で有名な三国時代のちょい前ですね。
それからも中国の磁器制作は洗練を続け、国が誇る重要な輸出品、文化財となっていきます。
ちなみに英語の『china』には『磁器』という意味もあります。
まさに中国を象徴する産物ですね。
16世紀ごろに製法がヨーロッパにも伝わり、各国に波及。
ドイツのマイセンなどのように、ヨーロッパにも磁器の名産地が産まれました。
デンマークのロイヤルコペンハーゲンやイギリスのウェッジウッドなど、現在でも人気なブランドも創設されていきます。
まとめ
さて、3回にわけて陶磁器について解説してきました。
少しでも理解を深めて頂けたでしょうか?
何回か書きましたが、陶器と磁器はあまり分けて考える必要はありません。
使い方の注意点についても器それぞれ。
一般的に磁器のほうが丈夫にできていることが多いですが、
電子レンジ・食洗機NGの磁器もあれば、レンジ・食洗機OKの陶器もあります。
先入観にとらわれることなく、注意書きを読んでそれに沿ったご使用を頂くのがよろしいかと思います。
次回は陶磁器の番外編、『炻器(せっき)』と『土器』について書いてみますのでお楽しみに!