【食器乱読】津軽びいどろ
津軽びいどろは文字通り、青森県の工芸品です。
透明のガラス地に、四季をテーマにしたカラフルな装飾が特徴的。
そんな津軽びいどろについてご紹介します。
びいどろって何?
聞いたことのあるような、ないような。知ってるような、知らないような。
びいどろはポルトガル語の『vidro(ヴィードロ)』で、ガラスの意味です。
なんとなく、レトロ的な響きがある言葉。
ポルトガル語といえば、カステラもポルトガル語であることはよく知られています。
長崎のポルトガル商人が話していた「カスティーリャ王国」が語源なんだそう。
外来語が長い期間をかけて日本語として馴染んでいったわけです。
だから、なんだか古いのにロマンがあるというか、ちょっとおしゃれな響きがするんですね。びいどろ。
ちなみに、ガラスを指すレトロ言葉といえばもう一つ、『ぎやまん』というのもたまに聞きます。
ぎやまんはもともとオランダ語のdiamant(またはポルトガル語のdiamao)が語源で、ダイアモンドのことです。
ダイヤそのものを指す言葉から、ガラス製品一般を指す言葉へと変化し、今ではびいどろとぎやまんの間に明確な区別はないと言われています。
産地は?
青森県青森市の北洋硝子で作られています。
もともとは漁業で使う浮き球を作る工房でした。
浮き球、こういうやつですね。そうか、ガラスだったんだ。
漁業について全然詳しいわけではないけど、よくガラス使ってたな。割れそう。
1975年頃からプラスチック製が普及し始めるのですが、それまでは日本国内で使われる浮き球のうち、約60%を北洋硝子が生産していたそうです。圧倒的シェア!
プラスチック製への転換に伴い、新しい商品として1977年に誕生したのが津軽びいどろ。
津軽びいどろ自体の歴史も30年以上ありますが、工房自体は1949年創業なので70年超。超老舗です。
ちなみに当店には岩手出身のスタッフがいるんですが、彼女いわく「津軽びいどろは岩手にも普通にありますよ」とのこと。もはや青森だけで収まる存在ではないようです。
青森、一回行ったことがあります。
北陸新幹線まで新青森まで行って、青森まで移動し、そこから夜行列車で札幌まででした。
なので観光は青森駅周辺を軽く観たくらいでしたが、クイックに観光できるところが揃っていて楽しかったです。
ねぶた館とか、シードル醸造しているところがあったような。
超・余談ですが僕が個人的に好きな青森駅について語っておきます。
え?あおもり駅、無くなったの?
しばしばネタにされるようですが、青森駅といえば駅舎のショボさ。
これが県庁所在地のターミナル駅なのかと言いたくなるくらいの慎ましさで、ある意味『津軽海峡冬景色』で歌われるうら寂しさみたいな雰囲気たっぷり、旅情を掻き立てる効果は抜群でした。
この記事を書くにあたってふと調べてみたところ、
大変貌!】東西自由通路がオープンした青森駅新駅舎と旧駅舎の今を見る
なん・・だと・・?
なんと今年始めに駅舎建て替え工事が完了し、素晴らしくキレイになった(なってしまった)ようです。
そうか、おめでとう。良かった。
僕が訪れたのは確か2013年頃。
まだ新青森-新函館北斗駅が未開通だったこともあり、鉄道で函館に渡るには青森駅が不可欠でした。
しかし今では函館までの開通に伴い、青函連絡を担っていた夜間急行「はまなす」は廃止。
もはや青森駅は北海道への連絡口ではなく、本州北端のターミナル駅になったわけです。
そういう時だからこそ、きれいにリニューアルして地域の方の気分を盛り上げるというのは大事ですよね。
僕みたいな観光客が「あのボロさが良かったのにな~」なんて言うのは勝手すぎるというものですよ。
・・・・あのボロさが良かったのにな~。
せっかくなので旧駅舎の紹介ページを貼らせて頂きます。
平屋建ての駅舎に「あおもり駅」。良いじゃないですか。
なんか平仮名の柔らかさみたいなものを感じます。
はい、すいません。脱線しました。電車だけにね(やかましいわ)。
津軽びいどろの話に戻ります。
津軽びいどろの特徴は?
澄んだ透明度の高いガラス地に、カラフルで遊び心あふれる模様が特徴的。
例えばこちら。人気の高い"ねぶた"シリーズ。
透明のガラス地に赤・青・黃・緑の模様が散りばめられていて、とてもにぎやかです。
ねぶたといえばご存知、青森どころか日本を代表すると言ってもいいお祭りですね。
東北といえば各県の代表的な夏祭りがあるほど、お祭りが盛んな地域。
東北は冬になると寒さ厳しく雪深くなってしまうので、家の中でじっと過ごすしかない。
そういう鬱憤を晴らすために夏は精一杯華やかに飾り付けたお祭りで楽しむんだ、という話をどこかで聞いたことがあります。
スウェーデンとか北欧の国々もそうですね。
あそこも冬になると白夜で一日を通してほぼ太陽が昇らないので、短い夏を存分に楽しむみたいです。
そう考えると、ねぶたシリーズは、まさに『津軽びいどろ』だからこそ作れたデザインといっても過言ではありません。
他にも弘前城の桜をイメージした"さくらさくら"など、青森の自然や文化をモチーフにした作品を数多く制作されています。
ボディは基本的に厚め
津軽びいどろは基本的に厚めです。
『うすはりグラス』のように薄さや軽さをウリにしたものではありません。
お話したように元は漁具としての浮き球を作っていたわけなので、薄さを求めるのは性分ではないのかなと思いますね。
海の中に投げ込んだり引き上げたりする浮き球が薄くて割れやすかったら、使いにくくてしょうがないですから。
あとは『津軽びいどろ』ですかね。
これが『TOKYOグラス』みたいな名前だったら薄くシンプル&スタイリッシュに仕上げるのも良いと思うんですよ。
でも、津軽びいどろでそんなデザインにしちゃったら、「お前、津軽だろ?びいどろだろ?」ってなりません(笑)?
まあ、それはさておくにしても、津軽びいどろのポリシーで『日常使いしてもらえる製品を作る』ということがあるそうです。日常使いするならやはり、どっしり厚みがあったほうが安心ですよね。
青森の幸をいただく時に
やはり青森という地に根ざしたブランドだからこそ、青森の美味をいただく時にぴったりです。
青森出身の友人を招いて食事をする時なんかにね、「この酒器、青森の工芸品らしいよ」なんて言って、地酒なんか酌み交わしたらめちゃくちゃ粋じゃないですか。
青森の日本酒といえば田酒とかですかね?僕、日本酒はあまり詳しくないですけど。
食事やお酒の産地と、食器の産地のマリアージュを楽しめるって、かっこいい大人です。
もしくは、外国の方と食事する時なんかにもいいですね。
下品にならず、適度に日本らしさが際立つデザインなので、ちょっとしたプレゼントにしてもとても喜ばれると思います。
当店はレンタル屋さんなのでプレゼントにはできないんですが、まあそれはそれで(笑)。